学校法人 加計学園

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2012年10月04日

完全復元 伊能図 全国巡回フロア展を終えて

 平成24年9月21日から3日間にわたり本学園で開催しました「完全復元 伊能図 全国巡回フロア展」につきましては、3509名の参加をいただき、盛会裏に終えることができました。参加された皆様の多くは、ご自身のお住まいや、故郷の位置を興味深く探され、あちらこちらから歓声があがっていたのが印象に残っております。

 この催しは、私どもが設置しております岡山理科大学附属高等学校創立50周年を記念して開催されたものであり、今回、開催までの労を取っていただきました、中央実行委員会 星埜 由尚(ほしの よしなお)会長にこの場をお借りしまして心から御礼申し上げる次第です。
 また、開催の準備、設営等にご尽力くださいました学外学内の皆様にも併せて御礼申しあげます。

 さて、伊能忠敬については、皆様も御承知のことと思いますが、千葉県九十九里町に生まれた、江戸時代後期の測量学者であり、若い時には、主に商業で才覚を表したのみならず、天明の飢饉では私財を投げ打って人々の救済にあたられたと聞き及んでおります。

 その伊能忠敬が50歳を迎えた時に、測量学を学ぶために家督を息子に譲り、江戸へ赴き、天文学の第一人者である高橋至時(たかはし よしとき)の門下生となり、昼夜をたがわず勉学に打ち込み、「地球の大きさを知りたい」という思いから55歳で東日本の測量に向かわれ、3年をかけて測量を終え、それを基に当初の目的であった地球の大きさの計算に取り組まれ、その成果はオランダの最新天文学書の数値と一致し、さらに現在、分かっている地球の外周と千分の一の誤差しかないという正確なものでした。

 そして、その成果により幕府の命で、60歳で西日本の測量に向かわれました。
測量の旅を終えた後、病に犯され73歳で病没されましたが、その完成度の高さは、その後、来日した英国の測量隊を「測量の必要なし」と言わしめるほどの高い精度のものであり、英国海軍は忠敬の地図を基に海図を作成した際、その巻頭に「日本政府から提供された地図による」と書き記してあったことは、いかに優れた地図であったかを物語っております。

 私が、この伊能忠敬という人物について注目する点は、二つあります。
 まず第一に、50歳で学問を志して江戸に行かれたことです。今でこそ人生80年ですが、あの時代では50歳と言えば隠居する歳であり、それが当時の常識でした。それを、自らの知的好奇心を叶えるべく江戸行きを決断されたことは実に驚くべきことであります。
 第二に「地球の大きさが知りたい」という自らの夢を叶えるべくさらに日本全国を測量して巡る旅に出られたことであります。江戸時代と言えば自分の住んでいる藩こそがその人の国であり、世界であり、それ以外は異国であり、さらに日本全国を旅することは現代の我々の感覚では世界一周かそれを超えて、地球以外の天体へ旅するくらいのプロジェクトであったと思います。

 ここ数年、現代の私たち日本国と日本人には様々な課題が山積しております。その私たちに今、必要なのは伊能忠敬のような飽くことなき「探究心」と「チャレンジ精神」ではないでしょうか。

 私たちが進む道こそ違え、伊能忠敬のような「探究心」と「チャレンジ精神」を持って事に当たれば、必ずや混迷する現代を大きく変革する原動力となるものと確信いたしております。

 このフロア展がそのためのきっかけとなりますことを心からお祈りいたしまして、甚だ簡単ではございますが、私の挨拶とさせていただきます。

理事長・総長
加計 孝太郎