稚魚を網ですくい、大水槽に移していく学生たち
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2022年07月26日
近大産のマグロ、好適環境水で陸上養殖スタート
岡山理科大学・生物生産教育研究センターの大水槽(直径8㍍、140㌧)に7月23日、近畿大学の水産養殖種苗センター(和歌山・串本町)で育ったマグロの稚魚(体長5㌢~7㌢)が到着しました。約400㌔という長距離移動の最中、水槽内の異物に衝突するなどして死んだ稚魚もおり、岡山まで無事にたどり着いたのは、購入した100匹のうち41匹でした。ここから山本准教授の新たな挑戦がスタートします。
理大のマグロ養殖は2010年度にスタートしましたが、水槽の壁に激突するなどして最初の120匹は全滅でした。激突死を防止するため水槽の周囲をトラ柄にしたり、配管を埋め込んで目立たなくしたりと工夫を重ね、2016年から養殖を始めた30匹のうちの1匹は2019年夏まで、水を交換することなく2年10カ月生存し、全長1・2㍍、体重35㌔にまで成長しました。今年1月、最後まで残っていた1匹が死んで以降、マグロの養殖は中断していました。
養殖用のマグロはこれまですべて、愛媛県内の漁協から天然の幼魚を購入。ただ、天然の幼魚には釣り針で傷がついたり、擦り傷がついたりしていて、それが生残率の低下につながっていました。さらに「資源保護」の観点から、完全養殖の近畿大学産に着目し、近畿大学水産養殖種苗センター側に稚魚の購入を打診したところ、了承されたため100匹を購入しました。
これまで養殖に使った幼魚の体長は20㌢ほどでしたが、今回の稚魚の体長は6㌢前後とかなり小さいため、大水槽のごみ取り用の取水口の幅を15~20㍉から5㍉へと改良し、配合飼料も極小サイズへと変更しました。
稚魚たちは、この日午前9時に串本町の近大水産養殖種苗センターを出発し、午後3時半ごろ、岡山キャンパスの生物生産教育研究センターに到着。半数以上が水質浄化用の活性炭ケースに衝突するなどしてぐったりしていましたが、工学部バイオ・応用化学科の学生たちは、生き残った稚魚たちを次々に網ですくい上げ、大水槽に移していきました。
再度のマグロ養殖への挑戦について、山本俊政・工学部応用化学科准教授は、「輸送方法については生残率を上げるために、もっと工夫していかないといけない」と話し、「マグロ養殖はトライ・アンド・エラーの繰り返しです。今回は無換水で体重35㌔以上をめざしていきます」と情熱を燃やしています。
稚魚の大きさは体長6㌢ほど
マグロの稚魚を大水槽に移す学生たち
輸送してきた水槽から稚魚をすくい上げる山本准教授